河合俊一、池袋から品川まで徒歩五分
この冬、たくさん服を売って、少しだけ買い足した。
欲しいものを欲しいままに買ったら、ノーカラーだとかバンドカラーだとかヘンリーネックだとか、襟のない服ばかりを選んでしまった。
襟のない服ばっかり着ている奴、というレッテルが貼られそうだが、多分そうはならないだろう。なぜなら着ていく機会が無い。
三十にもなると、なかなか友人と出かける機会が無いし、そもそも今回の冬は全然気温が下がらなかった。フリースジャケットを一枚羽織っただけで汗をかいてしまう。
なので、どの服も一度ずつしか着ていない。
コストパフォーマンスという尺度を用いるなら、コスパ最悪の服たちだ。
いや、少し違う。彼らに罪は無い。使用頻度を考えなかった私自身か、あるいは冬なのに冬になりきれなかった沖縄が悪い。
ここは半々でどうだろう。
「悪い」という言葉を物質化する。例えば百キロの真っ黒な塊に。
それを二つに割って、半分は私が背負う。もう半分は沖縄に。とりあえず、その分は庭の隅に置くことにした。
五十キロを背負って暮らしたことのある人ならわかるかもしれないが、何せ重い。
紐が食い込んで跡ができるし、紐が擦れて普段着の肩の部分が全部毛羽立ってしまった。
だから今、悩んでいる。
摩擦に強い服を買うか、ズレが少ないしっかりした背負い紐を買うか。
先を見据えた買い物ができないからこうなったのに、また買い物をしようとしている。
自分の失敗を自分だけで解決しようとすると、こうやって同じような穴に陥りやすいのかもしれない。