ミートミート、タコミート、グッバイ
冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに、タコライスの素が入っている。
タコライスの素とは、タコライスの上にのっているあの味付けされたひき肉だ。
それをご飯の上にかけてあげればすぐにタコライスが出来上がるし、ご飯の下に敷いてあげてもタコライスが出来上がる。ご飯とタコライスの素が触れ合っていなくてもタコライスと呼べるのだろうか? そこが線引きになる気がする。
つまり、私が言いたいのはそれではない。
冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに入れてしまったばっかりに、あまり開け閉めをしないまま、タコライスの素を使わずに賞味期限を切らしてしまった。これをどうするべきか、ということだ。
なんとかのなんとか という理論がある。
例えば賞味期限がたった今切れた食材があるとしても、その一秒後に食べても問題は無いし、そのさらに一秒後も問題無い。ということは……、というものだ。
その理論に従って考えれば、食べないという選択肢は消え失せてしまうのだが、何せ一年以上期限が切れてしまっている。
私はたびたび食材の期限を切らしてしまい、その度に「○○賞味期限切れ」と検索をして、誰かの見識に頼ろうとする。
「夏場なら何日ぐらいもつ。冬場なら~」という風に解説するサイトもあれば、知恵袋などでは「食べられれば食べられる」と書いてあったり、「そのたかが数百円の為に腹を壊す覚悟があれば~」と半ば呆れを含んだ愛の回答があったりする。
本当は、わかっている。
あのタコライスの素は捨てるべきだ。
だとすると、ハンガーに二年以上掛けたままのあの服も捨てるべきだ。あれは興味期限が切れている。
志村けんの公式ラインアカウントはどうしよう。
あれは……適当にメッセージを送ると、志村が秒速で返事をくれるのだ。
志村より早く返事を返してくれる別の友達を見つけるまでは、そのままにしておこう。
明日、タコライスの素は捨てよう。
そして、再び私の下に彼を迎え入れる日が来るなら、もっともっと大切にしてやるんだ。ああ、もちろんさ。安心しな。食べたりするもんか。
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