今や、男も化粧をする世の中です。
私は話すのが嫌いではない。
しかし、だからといって、話すのが上手いということに直結するわけでもない。
えー、
と注目を集めて、たっぷり間をとってから、何も思いつかずに「何か?」という顔をして黙り込むこともある。
えー、
一時間後
ほれ。何も思いつかない。
こういう時は、周りを見る。目で、耳で。
木がきしむ音がする。歯ぎしりのような音だ。多分、台風で折れた竹が悲鳴を上げているのだろう。
外に出た。
伸びた雑草の一角で、ガサリと音がする。じっと目を凝らすが、それ以降音は止んだ。風で草葉がたわむ音ではない。十グラムかそこらの、動物が動く音だ。カエルかもしれない。
目の前の若葉に蝶が止まる。彼女はちょこまかと飛んで、歩いた。
蝶が歩くのを見たのはそれが初めてで、へぇ、歩くのか、と私は感心した。
蝶は尻尾を葉にチョンチョンと当てながら動き回っている。もしかしたら、卵を産み付けているのかもしれない。
一センチほどの黒い虫が数匹飛んでいる。暖かくなると出てくる、得体の知れない虫だ。二匹くっついて飛んでいるやつもいる。交尾をしているのだ。
私はひとつ思い立ち、口を開く。
えー、
一帯が一瞬にして静かになった。
竹も、カエルも、蝶も、黒い虫も、こちらに耳を向けたらしい。私は話し出す。
交尾というのは……
一帯の静けさが、一瞬にして騒がしさに変わった。
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