へたに真っ平らにすると、不安定でも立っちゃうので、あえて少しいびつにしてるらしいよ
ご存じだろうか。
ぼうっとしていると、ぼうっと時間が過ぎていく。
そして次第に眠気が襲ってくる。
これを就寝時に効果的に使えればいいが、最近少しうまくいっていない。夜中に目が冴えてしまう。
私はぼうっとする練習をすることにした。
ベッドに横になり、思考を止める。
無、無、無、無、無……。
無であろうと意識していることに気が付く。
無であらねば、という意識もなるべく捨て、天井を見つめる。
白い天井だ。
正方形が並んだデザインだ。
灰色のシミがある。
1、2、3、4、5……74個。
1、2、3、4、5……71個。減った。
1、2、3、4、5……72個。
だめだ、シミの数が数えるたびに増減して、目が冴えてしまう。
シミから視線を外し、天井を見るともなく見る。
まん丸なシルエットのシーリングライト、一昨年に買い替えた。
この部屋に丸はいくつあるだろうか。
扇風機、ゴミ箱の入り口、スピーカーのボタン、ウーハーのメッシュ、腕時計、コロコロ……。
あとは……。
視界の端、部屋の片隅の中空に丸が浮いている。
見慣れないが、馴染みのある丸だ。
丸というよりは穴。穴の内側は真っ暗で、まさに無になっている。
アニメでよく見る、とほほパターンでしめる時の、あの丸だ。
ほっと溜息をついた。とりあえず、アレがあれば少なくともオチには困らない。
何を思ったわけでもなく、私は穴に近寄った。
しかし、近づけば近づくほど、不安が胸を打つ。
あっ、と気が付いた時にはもう遅い。穴は、オチの小窓ではなかった。つい先日撮影に成功した、あのブラックホールだったのだ。
一瞬にして体全体が引き込まれ、私は今、いわゆる「事象の地平面」にいる。
めちゃくちゃに伸びて、縮んで、光って、暗い。
オチをつけなければ。
ああ。考えている間に、地球の色が三回も変わった。
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