スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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夜中にふと目覚めて食器を洗い出すなんて、おかしいでしょう?

 

ミステリーサークルをご存じだろうか。

穀物などがなぎ倒されて幾何学模様を作り出すアレだ。

オカルト全盛の時代には度々取り上げられていたが、最近はめっきりそういった話を聞かなくなった。

 

それが私の身に起きたのは、4月19日のことだ。

ベッドに寝転がり、録画したテレビ番組を見ていた。

何の気なしに手の甲に目をやると、既にそれはあった。

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手の甲の中心辺りに円形の溝が彫られ、無数のクレーターがそれを囲むように配置されている。

 

ミステリーサークルは異星人の仕業だという説と、人間のいたずらだという説がある。

寝転がっている間に私の部屋に入ってきた人間はいなかった。人間のいたずらだという説はここで否定される。

 

だとすると。だ。そういうことになってしまうが、そこまでピュアな心も持っていない。そもそもずっと意識はあった。

突然窓の外を強烈な光が包み宙に吸い上げられる、いわゆる『キャトルミューティレーション』という体験をした覚えはない。頭の中に何者かの声が聞こえるなんてことも、もちろんない。

 

ふと、もう一つの可能性に突き当たる。

『聖痕』だ。

しかし聖痕というものは、イエスキリストが受けた痛みが信者の体に現れるものではなかったか。私はキリスト教徒ではない。

 

だとすると、キリスト教ではない、別の宗教の聖痕かもしれない。

私はもう一度手の甲を観察した。

円を中心にして、放射状に続く丸、ドット、クレーター。何かの略図のようでもあるし、ロゴのようにも見える。

 

ゴトリ、と音がした。

倉庫兼衣類の乾燥室代わりに使っている隣の部屋だ。

私はそっと、つま先立ちで歩き、隣の部屋のドアをゆっくりと開けた。

 

髪のなっがーい恨めし気な女が常駐している。もちろん怨霊だ。

「うるさいぞ」

私はボツリと告げる。

どうにかならないものか。どんなに除湿器を回しても、彼女の湿った髪はいつまでたっても乾かないのだ。困ったものだ。

 

あっ。

思い出した。

洗濯機回してたんだった。

 

 

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