スウィーテスト多忙な日々

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ジゴク・ウイーク

 
車窓から見えたのは、おどろおどろしい一文だった。

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「天国は永遠の命 地獄は火の海 聖書」
これを市民に見せつけて、一体何を思わせたいんだろう。
 ゴールデンウィークが始まり、運良く天国と地獄へ行くことができた。
 私はプリントした写真を手に、その真相を訊ねてみた。
 
 微笑みをたたえた天使は優しく教える。
「そのままの意味です。天国は、苦しみも悩みも無い、永遠の命をもってあなたを迎えます」
「誰でも?」
「善行を重ねた者へ、天の国は許可を与えます」
 私はかねてから気になっていた質問を繰り出した。
「みんなのために一人を殺すのと、一人のためにみんなを殺すのはどっちがいいんですか?」
 
 天使は決まりきったことを教えるように話す。
「みんなを救いなさい。一人も含めたみんなを」
「そんなキャパオーバーなことすると、私が死んじゃいます!」
「イエス様もそうでした」天使はなつかしそうに言う。「神は愛です」
「自己犠牲が正義なんて、特攻隊じゃないんですから!」
 納得できない答えに、私は天国を飛び出した。
 
 地獄はまさに火の海で、揺れる大火の隙間から、踊る亡者が見える。
 ごうごうたぎる火の海に向かって叫んだ。
「地獄はどうですか!」
「ほんまにー、火の海やんー。ほんまにー火の海とは思わんかったわー。苦しいー」
 亡者が間延びした声で返す。
 一人が話すと、他の亡者も触発されて口を開く。
「電波も通じひんー」
「あほかー、4Gやんけー」
「どこがやー、お前のスマホ圏外やんけー」
「火の池地獄ー、血の池地獄ー、針山地獄ー、クソ地獄で4Gやー」
「どわーははははー」
 亡者ギャグで地獄が揺れる。
 天国が本当に天国かはわからないが、地獄は本当に地獄みたいだ。

 

 

 

地獄へ行きたくなければ……言わなくてもわかりますね?

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