中川騒動
改めまして、こんにちは。
中川美希です。
tthatener.hatenablog.com
私は上記の理由で、そう名乗らざるを得なくなってしまった。
もう少しだけ詳しく話すと、私は元・中川美希と、衣服と免許証を交換した。彼女の目的が一体何なのかはわからない。
移動手段である車を奪われることはなかったし、今もこうして元の家に帰ってきた。
元・中川、略して元中も、この家に来た形跡はない。
とにかく、女物の服はすでに脱いでしまったから、実害はなかったようなものだ。
普段通りに夕食をとり、テレビを見る。数時間も経てば、元中との出来事を早くも忘れていた。
「ははは」
テレビでは、二十四時間耐久ワキ隠し選手権が開催されている。
腕を上に上げたりして、二の腕とワキに付けた赤と黄色のスイッチが離れると、装置が作動してしまう。スイッチは低周波治療器と連動しているので、ふと忘れたりミッションで無理をすると、ビリビリと電流が流れるのだ。
ポーン。
インターホンが鳴った。先日話した通り我が家のインターホンは壊れているので、ピンポンと鳴らない。
何か郵便物でも届いたかな? と思い、急いで玄関へ向かった。
サンダルをひっかけ、今まさにドアを開かん、という瞬間に気が付いた。
こいつ、元中だ。
玄関の磨りガラスにシルエットが映っている。上半身は青。私が昼に着ていたTシャツだ。
「帰れ!」私は叫んだ。「ここは渡さん!」
「警察です」
扉の向こうから聞こえる声は、男の物だ。
「あ、警察ですか」
慌てて玄関を開ける。そこに立っていたのは、なんと、というか、やはり、というか、まさか、というか。……元中だった。
つづく
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