満喫ゾンビ 後編
前回のお話
「来ますかね?」
私はムツゴロウさんに尋ねる。
ムツゴロウさんはこちらに目を向けず、口元に人差し指をあてて私を制した。スゥっと目が鋭くなる。
モグモグ、モグ、クチャッ、モグモグ。
「あぁっ」
モグモグ、クチャッ、モグモグモグ。
クチャクチャクチャ。
モグモグ、クチャクチャクチャクチャ、ペチャペチャ。
「出た」
「来ましたよぉっ」
ムツゴロウさんは興奮しているのか、身震いした。
「いいですねぇ~。彼らはこうして、食事の味を楽しむわけですねぇ」
男がちらりとこちらに目をやって、少し嫌な顔をする。
クチャクチャ、モグモグ、クチャ、モグ。
「こちらに気がついても、音は止まないでしょう? 彼らは自分が音を立てていることに気が付いていないんですねぇ」
クチャ。ムツゴロウさんの声が聞こえたのか、男は口を止めた。
「ほら、今気が付いた。可愛いですねぇ」
ムツゴロウさんはおもむろに立ち上がり、ツヤツヤした男の髪に頬ずりする。
男の耳が赤く染まった。
「ほぉらほら、可愛いねぇ。もっとお食べ」
ムツゴロウさんは箸を取り上げ、チキンを男の口に運ぶ。
男はまた恥ずかしそうに口を動かす。モグモグ、クチャ、モグモグ。
そうしてひとしきり食事を終えると、今度はカス取りの時間だ。
チュッチュッチュッ。
男は歯間に詰まった食べカスを取るべく、キレのある音を響かせる。
「上手に鳴きますねぇ。ネズミですよぉ」
ムツゴロウさんが褒める。
男は顔を赤らめる。まんざらでもない様子だ。
チュッチュッ。
シーン。
チュッ!
「可愛いですねぇ~!」
たまらない様子で男に飛びつき、胸に顔をうずめたムツゴロウさんは、そのままワシャワシャと体中を撫でまわす。
私もなんだか幸せな気分になる。かわいいなぁ、コイツ。
「ウチで飼っても……いいかな?」
問いかけに、男は嬉しそうに目を輝かせた。
「きっともっと好きになりますよぉ」
ムツゴロウさんも嬉しそうだ。
家に連れて帰り、エナメルのベルトで叩くと、とてもいい声で鳴いた。
やったぜ。
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