スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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私が何気なく立てた人差し指を、どこかの民族は侮辱と捉えるかもしれない。だから私は人差し指を仕舞い、中指を立てるのだ

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 フードコートのテーブル。健介と私たちは向かい合って腰掛けている。
 健介の眉間には、円周率を表すギリシア文字のようなシワが寄っている。パイだ。

「なにしてたんだよ」
 健介は険しい顔で言う。非難を含んだ口調だ。
「買い物だよ」
「二人ともヒマしてたからね」
 私が答え、葵も続いた。
「そういうことじゃなくてさ……」
 健介は依然硬い表情をしている。

「誘われなくていじけてんの?」
 私はまさに今思いついた予想を口にする。
「なんでだよ。子供じゃないんだから」健介は渋い顔で答えた。「なんで……なんで手ぇ繋いでんの? おかしいだろ」
「なんでって、なんで?」
 首をかしげながら、私はテーブルの上に手を乗せた。同時に葵の手もついてくる。二人はぴったりと閉じた二枚貝のように、手を繋いでいる。
 休日にショッピングセンターをぶらついていると、向かいから近づいてくる健介が目に入った。健介は目が合うなり、フードコートの隅の席に、引きずるような勢いで私たち二人を連れてきたのだ。

「いや、そういう趣味なん? お前ら」
「そういう趣味って?」
「いや、その……」健介は口ごもりながら言う。「同性……愛っていうの……?」
「あははは」葵が笑った。「なんだよ。気持ち悪いなぁ」
「俺たち、友達だから」
 そう、私と葵はただの男友達だ。
「友達だからって手は繋がないだろうよ」
「いやいや……」
 おかしいだろ、と健介が否定し、私たちはそれに弁解する。そのやり取りが何ターンも続いた。

 これじゃあらちが明かない。嫌々ながらも私は口を開く。
「今更、改めてこんなこと言うのも恥ずかしいんだけどさ……」
 私は言った。「俺達、仲いいんだよ……」
 
「はぁ、そう……いや……」
 健介は絞り出すような声で返した。納得しかねると言いたげな表情だった。

 わからん奴だ。
 こいつには仲のいい友達があまりいないのかもしれない。
 貝殻繋ぎぐらい、誰だってやるだろうに。

 もしかしてこいつ、ピュア?

 

「わけわからん」

 健介の呟きは、誰にもキャッチされることなく、マクドナルドの従業員の声にかき消されるのであった。

 

 

今週のお題「夏休み」

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