シバクぞ!!
田舎に住んでいると、ご近所トラブルというものはあまり起こらない。
我が家は一軒家で、移住者が住みつくメリットも見当たらないような寂れた部落なので、さらにトラブルは遠のく。
朝早くから草刈り機の音が聞こえても、子供がはしゃいだり泣き叫ぶ声がずうっと響いていても、あるいは漫画のようにボールが飛んできて窓ガラスにひびが入っていても、特に騒ぎ立てるほどのことではない。家の中にゴキブリが出た時の方がよっぽど感情が乱される。
夜も夜、時計の針は21時を迎えようかという時間である。
ドン、ドン、ドンと、窓の外から何かを叩く音が聞こえだした。何か、というか、これは布団を叩く音に違いない。
土曜日。布団叩きにふさわしい曜日で、ふさわしい晴れた日だった。だけどそれは日中の話。なんでこんな夜中に?
ドン、ドン、ドン、ドン。
音は一向に止む様子はない。一発一発が強く、力を込めているのがよくわかる。
ドン、ドン、ドン……ドン!!
やけに響く。一度止んでも、少しの間を開けて布団叩きは続く。
おい、いい加減にしてくれ。少しずつムッとしてきた。周囲の家みんなに聞こえてんぞ。
ドン!! ドン!! ドドン!!!
ムカつきがどんどん怒りに近づいてくる。
くそ!! なんだよ一体!!
私は窓を開けて、暗闇に耳を澄ました。
ドン!!!!
空気を震わすほどの一発が鳴って、やっと気がついた。
そうか。なるほど。
夏だからね。
今日は夏祭り。そして花火。花火大会だ。
私は庭に飛び出て、缶ビールを開けた。
ガジュマルの木の間からたまに見える花火は、夜にしか咲かない花みたいで、とても綺麗だ。
ガジュマル、邪魔だなぁ。
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