ミンミンと、鳴くけど涙は見せないの
部屋の中に強い日差しが差し込んで、窓の外では鳥が鳴いている。少なく見積もっても、三種類以上の鳴き声が聞こえる。果たしてそれらは全て同じ鳥なんだろうか。
鳥の姿を捉えようと窓の外の大木に目を凝らしていると、ふと気がつくことがあった。
セミが鳴いていない。
いかにも彼らにとってはおあつらえ向きの天気だというのに、まるでmisonoみたいにいつの間にか姿を隠している。
「ウチのブログ見て」
かつてmisonoはそう言っていた。軽々しく口を開いて言葉尻を捕らえられたり、言いたいことがすべて言えないのを懸念して、そう説明するに至ったのだろうか。
彼女が事あるごとに言っていたそのセリフを思い出し、私は彼女を追うことにした。
「misono」と検索して一番上に表示されたのは、彼女のオフィシャルブログだ。「ウチのブログ見て」発言は一定数の効果があったらしい。彼女の希望がまっとうに反映された結果で、じゃあとりあえずブログ見たろかな、と考える非ミソラーがいかに多いかというのがよくわかる。
misonoはほぼ毎日ブログを更新しているようだ。さすがにああ言うだけはある。
8月15日。最近の記事を読んでみると、いくつかの話題の中に藤井リナと会った事が書かれていた。唇の上の右端と左端にチャーミングなホクロのあるカリスマモデルだ。
misonoはこう言っている。
「『親友と、ただただしゃべる時間』って…いつぶりだろう!?
『女友達と、映画館で映画を見る』って…いつぶりだろう!?」
書いている途中で何か心境の変化でもあったのだろうか。藤井リナはいつの間にか親友から女友達に格下げされていた。もしかすると、藤井リナだけ映画の無料券を持っていたとかでmisonoは不公平さを感じたのかもしれない。
「あ、アタシ無料券持ってるから」と言われて、自分だけ映画料金を払う。その金額を払うのは当たり前のことなのに、何故だか自分だけ損をしたような気分になったのではないだろうか。いつか、そのこともブログに書いてほしいと期待している。
さて、misonoのブログを読んでいると、いくつかの発見がある。
まず、姉である倖田來未のことを「倖田來未さん」と呼んでいること。頻繁に話題にあがっているので不仲だという訳でもないだろうから、もしかすると芸歴も上の姉を尊敬する意味で、仕事上はそう呼んでいるのかもしれない。
次に、彼女の仕事量。姿を見ることが減ったと思っていたmisonoだが、ブログには意外にも忙しそうな日常が綴られている。確かに、あれだけのパワーを持っている人間が仕事もせずにだらだらと日常を送っているわけがない。そんなことをしたらきっと、遠野なぎこみたいになってしまうんじゃないだろうか。
ちなみに遠野なぎこは3,500以上のブログ記事を書いているようだ。misonoを軽く超えている。恐ろしい。
そしてなんといっても、彼女のブロガーとしての経歴。なんと彼女は2007年からずっとコンスタントにブログを続けているのだ。「ウチのブログ見て」と言いたくなるの頷ける。十年選手ならそりゃあそう言うだろう。ラーメン屋が「ウチのラーメン食って」と言うようなものだ。当たり前の発言なのだ。
話のまくらとして口走った話題の方に興味が移って、もうそこでおなか一杯になることがある。
そう。これはセミの話の予定だったのだ。
セミもウチには勝てない。セミのことを考えてみると、少なくともそれだけはわかった。
セミのことは結局よくわからないままだけど、少なくともそれだけは知っている。それだけで一歩リードだと思う。自分で動いて得た情報というのは、何物にも代えがたい財産になるのだろう。
何か文句のあるヤツ、ウチのブログ見て。
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