僕のお父さんはウルトラマン
僕のお父さんはウルトラマンです。
いつからだったかは忘れたけど、途中でウルトラマンになりました。
僕がうんと小さい頃は、お父さんは毎日仕事で忙しそうでした。
だけどいつからだったか、お父さんは仕事に行かずに遅くまで寝ているようになりました。
休みの日に僕がテレビでウルトラマンを見ていると、お父さんが起きてきたので、「お仕事には行かなくていいの」と聞きました。
するとお父さんはテレビをじっと見て、「いいんだよ、お父さんはウルトラマンだから」と言ったのです。
初めは僕も信じませんでしたが、たくさん質問をすると、お父さんはいろいろと教えてくれました。それでやっと本当だとわかりました。
怪獣が現れるとお父さんに電話が来るらしくて、お父さんはウルトラマンに変身して飛んで行って、怪獣を倒して戻ってくるそうです。
その話をしているうちに電話が鳴って、じゃあな、と言ってお父さんは出かけて行きました。
怪獣の火も、氷も、爪もはねかえして戦うお父さんはとてもすごいと思いました。
僕はお父さんがウルトラマンだということは友達の誰にも言いませんでした。誰にも言うなとお父さんが言っていたからです。
お母さんにだけは言いました。お母さんはいつも疲れていて、僕がウルトラマンの話をしても嫌な顔をするだけでした。
あんなに頑張っているのに皆に褒められないなんてかわいそうだと思いましたが、褒められなくても頑張るお父さんがかっこいいとも思いました。
だから、僕はお父さんと二人きりの時だけウルトラマンのことを聞くことにしました。
だけどお父さんはウルトラマンのことをあまり教えてくれませんでしたし、ぼくがしつこく聞くせいでひっぱたかれてしまいました。
僕はお父さんにウルトラマンのことを聞くのをやめました。
なのに、お父さんは僕たちのことをしょっちゅうひっぱたくようになりました。
そのうち、何も言わなくてもウルトラマンを見ているだけでひっぱたかれるので、僕はお父さんがいない日だけウルトラマンを見るようになりましたが、ウルトラマンを見ているとひっぱたかれたことを思い出して嫌な気持ちになるので、お父さんがいない日でもウルトラマンを見なくなりました。
おとといの夜です。僕とお母さんは、お父さんにめちゃめちゃにひっぱたかれました。お父さんは酒をたくさん飲んでいたのです。
お母さんはひいひい言っていましたがそのうち疲れて寝てしまいました。お父さんもテレビの前でぐうぐう寝ていました。
僕は考えました。
次回のウルトラマンを見たら、みんなびっくりするかもしれません。
火と、氷と、爪は、ホームセンターで盗みました。