スウィーテスト多忙な日々

誰かの役に立つことは書かれていません……

題もつかんほどまとまってない

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離島に住むまさひろが何かしらの理由で沖縄に来るというので、学生時代のメンバーで酒を飲んだ。

久しぶりに会う彼は久しぶりに会う顔ぶれに興奮しっぱなしで、どんどん酒を飲み、どんどん酔った。
くだらない話でキャッキャとはしゃぎ、お得意のおもしろフェイスで周りをキャッキャと湧かせる。酔いが深まるにつれて、くだらない話が薄くてくだらない話しになっていく。私が「水みたいな話しやがって……」と罵ると、それでまたキャッキャと笑った。
「お猿さんのパーティーだな」と誰かが言っていたが、その通りだ。

二次会でもまさひろの勢いは留まることを知らず、おもしろフェイスにおもしろダンスを加えて私たちの注目を浴び続けている。
よっぽど楽しいのだろう。
彼はどんどん加速して、しまいには女の友人の靴を脱がし、その足をこねくり回すという誰もが理解しがたい暴挙に出た。一体君は何をしているんだ。本来なら誰かがたしなめるところだ。女性陣がドン引きして帰ってしまってもおかしくない。

 

しかし、場の雰囲気はそれでも崩れることなく、会は全員が笑顔のままで終わった。まさひろは帰り際にキスをせがみ、グループの中でも一番のイケメンの唇をゲットしていた。それから腹を空かせた三人で街を徘徊し、ラーメンを食べて解散した。

翌日。
グループラインには彼のおもしろ集が次々と投稿された。どの写真にもどの動画にもまさひろは写り込んでいて、冷静になって見ると恐ろしい場だったと改めて気が付く。
しかし、続々とメッセージが飛び交う中、彼は一向に姿を現さなかった。
「あれだけ騒いだから二日酔いで死んでるんじゃない?」
足を弄ばれていたゆりかが言った。懐の広い女だ。

 その後も画像の応酬が続く中、かなこが気になる発言をした。
「これ、ほんとにまさひろ?」
 デジタル上の会話が一瞬止まる。私と同じように、他のみんなもその意味がよくわかっていないようだ。
「見てよ。二次会に入ってから、まさひろの顔、なんか違わない?」雰囲気を察してか、返事を待たずにかなこは続ける。「みんなのテンションもおかしかったよ。お酒に薬でも入ってたんじゃない?」
 薬を混ぜたのは私だ。顔が違う? そんなはずがあるだろうか。しかし、なぜか「そんなはずはない」と断定する者はいない。
 グループの誰もが、その異変にようやく気付きはじめたようだった。

 あの写真も、この動画も、確かにどこかおかしい。こいつ、ほんとにまさひろか?
 どこがどうおかしいのか言語化できないが、言われてみるとどこかが決定的に違って見える。
 これがまさひろじゃないとしたら、一体誰なんだ。なんのためにこんなことを――

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 さて、「私」の日記はここで途切れている。手錠をかけられ大人しくなった「私」は、何も話そうとはしない。罪人に口無し、だ。
 あの日以来失踪してしまった先山正博は、一体どこへ行ってしまったのか。

 大きいパンを食べながら、偉い警察の男はいろんなむずかしいことを考えるのであった。

 

 

 

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内のぉ、人と書いてぇ、肉と読みますぅ。

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冷凍庫から、外を新聞紙に包まれた肉が出てきた。

冷凍庫で食材を漁っていると、小分けにしたご飯の下からその肉は出てきて、私は「しまった」と顔をしかめた。
それは近くに住む親戚からの頂き物で、二週間だか三週間だかそれぐらい前の物だ。いや、一か月だったかな。もしかすると二か月かもしれない。
そもそも何の肉だ? 考えるともなく考えていると、冷凍庫が「いいかげんに閉じてくれ」と文句を言い出した。
とにかく、見つけたからには食べるしかない。解凍するためにボウルに水を張って、肉の入ったポリ袋をそれに浸した。

一分二分でとけるわけではないので、その間に洗濯をして、さらにその間に伸びてしまった髪を切った。あれこれこなす間に時間は過ぎて、解凍を始めてからすでに二時間は経過している。むしろ肉のことはすっかり忘れていて、手を洗うためにキッチンに足を運んだおかげでようやく思い出した
そうだ。私はメシを作っていたのだ。ボウルから引き上げると肉はすっかり解けていた。が、嫌な予感がする。これ、傷んどりゃせんか?
一気に不安になった。
しかしせっかく時間をかけて解かした肉を使わないのは馬鹿らしいし、そもそも捨てるのももったいない。人様からもらった肉を捨てるなんて罰当たりだろう。それは肉を捨てているんじゃない。親切心に唾を吐いて、命を愚弄する悪行だ。

食べよう。もし腹を痛めたとしても、そんな「決断」をせざるを得なくした自分が悪い。肉に片栗粉をまぶし、甘辛いタレを絡め、先にレンジにかけた野菜と一緒にフライパンで炒めた。
肉と野菜とタレが絡めば、まずおいしそうには見える。例に漏れず、今回もまぁ悪くはなさそうだ。
味見のために肉を一片口に運ぶ。その瞬間、一つの失敗に気付いた。片栗粉だ。肉の表面は少しとろりとしていて、それが腐敗の「せい」なのか、片栗粉とタレが絡んだ「おかげ」なのかがわからない。
くそっ。私は地団駄を踏み、その勢いで飛び上がり、空中であぐらをかいて、その姿勢でフローリングに着地した。

考えろ。
ここでやめれば助かるかもしれない。
しかし、それが不可能なのは誰よりも私自身が知っている。今の状況は、例えばスカイダイビングをしにわざわざオーストラリアまで行ったのに、飛ばずに帰ってくるようなものだ。あるいは美容室を訪れたベッカムが……。

結局、選択肢は一つだ。私は恐る恐る肉を食べた。
いや、一つしかないならそれは選択肢と呼べない。選択肢はなかった、ということか。
とにかく肉を食べた。柔らかい。どうして柔らかいのか、どうしてとろりとしているのかをひと噛み毎に疑いながら食べた。

結果、数時間経っても私の腹に異変は起きなかった。
そして寝る前にふと思った。あの肉は、うまかった。もしかしてイイ肉だったのかもしれない。柔らかさも、舌触りも、今になって思えばそれが良質の証だったような気がする。それなのに、楽しむことなく、疑いの一心で……。


人間は、学ぶ生き物だ。失敗して学び、次への教訓とする。
私はどうだ。

何でもかんでも冷凍庫に放り込んで、失敗を繰り返す。まるで誰かのかぁちゃんだ。

そうか。私は――。

私は誰かのかぁちゃんだったのか。
よかったぁ。

 

 

 

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