スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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2023-01-01から1年間の記事一覧

ナマケモノが絶滅してさ、名前が空いたらさ、僕がもらうよ

私は今、座り心地のいい椅子に行儀悪く腰かけて、目線の高さにレモンを掲げている。 何をしているのかと自問自答するならば、その答えは一つ。レモン観察だ。 事の発端は、レモン越しに見える掛け時計にある。私は強烈に重大な真理を知ってしまった。 深夜三…

僕のお父さんはウルトラマン

僕のお父さんはウルトラマンです。 いつからだったかは忘れたけど、途中でウルトラマンになりました。 僕がうんと小さい頃は、お父さんは毎日仕事で忙しそうでした。 だけどいつからだったか、お父さんは仕事に行かずに遅くまで寝ているようになりました。 …

おばあちゃんち

「おばあちゃんちに行ってくる」 と言って、良太は今日も家を出た。 小学三年生の息子は、あまり外交的とは言えず、たとえ家の中であっても口数が多くない。 そんな子だから、学校でいじめられていやしないかと心配したりもしたが、日々の様子を見るにそんな…

なにかが起きているのか

">「冷蔵庫の中を見てみろ。そう言っていた?」 警察官であり彼女の学生時代の先輩でもある私は、通報を受けて彼女の家で事情を聞いている。「えぇ」「声に心当たりは?」「ありません」 みゆきは震えている。恐怖のせいかもしれないし、部屋の冷房が十八度…

Heart to heart

「ハトが電線に止まっても感電しないのはなんで?」 秀夫が言った。秀夫は子供だ。 そんな質問をするなんてまだまだ子供だ、という意味ではない。私の子供だ、という意味だ。 子供が子供らしい疑問を持つのが当然であるように、大人である私がその問いの答え…

あいてるよおじさん

小説家である。 誰もが知るような文豪ではないが、一本で食っていける程度の稼ぎはある。 だがしかし、私は今、長いトンネルの中にいる。もう随分と長い期間書けていない。 題材はあるのだ。いや、むしろそれが問題でもある。 「あいてるよおじさん」 この題…

悪魔が笑う

私は、悪魔である。 理不尽な裁きを与える。 夕刻のオフィス街である。 帰路につくスーツの群れに、一人の男が紛れている。 と言っても、男は何も悪いことをしたわけではない。どこにでもいる普通の、平凡なサラリーマンだ。 本人からすると紛れているつもり…