スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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2020-01-01から1年間の記事一覧

へぇ、と言わせたひ

「屁意」という言葉は無い。ご存知だろうか。 スーツでカッチリときめたビジネスマンは、「うんちしたい」とか、「おしっこしたい」などとは決して言わない。言えない。便意、あるいは尿意という言葉があることによって、「失礼、ちょっと便意が……」とその場…

人だかりの話 2/2

tthatener.hatenablog.comつづき 「怖いだとか、浮浪者が住み着いてるだとか、そういうことじゃなくてね、行ったってなぁんもありゃせんから、誰も近寄らん場所だったのよ。あそこは。ただ雑草が生えてるだけだもの」 後ろ手を組み、黒山の方を振り返りなが…

人だかりの話 1/2

彼女に腕枕をしながら、私は山のことを思い出していた。 私の故郷には、春になると桜が咲き、秋になるとモミジやカエデ、カツラなどが鮮やかな紅葉を見せる山がある。 山の名前を「黒山」という。 木々が色づく季節には遠方から多くの観光客が訪れて、彼ら彼…

鷹は本当に爪を隠すか

私は脳無しだ。 部屋は汚い。衣類はもちろん、ありとあらゆる物がありとあらゆる引き出しや収納から放り出されている。 私は衣装ケースを根っこまで引き出し、頭を突っ込んでそれを探す。五段に重なった小部屋が三列連なるケースに次々と頭を突っ込む。順番…

計ったような博多の母方の歯型

悩んだ挙句、肩に突起をつけることにした。 ガンダムみたいでかっこいいとか、ショルダー攻撃の威力を上げたいだとか、拘束された時に突起であごを掻きたいだとか、そんな馬鹿げた理由ではない。 トートバックがズレ落ちるのだ。 普段からトートバックを持ち…

うん、チーズ。

たまに、家の中で異臭がすることがある。 キッチンに置いているかごの底で人知れず腐ってしまっている野菜があるとか、どこから入り込んだのか小さなネズミが置きっぱなしの衣類の陰で往生しているとか、考えられる理由は様々だ。 そういう時はごく一部の、…

ズボンとパンツとパンティとショーツとショートパンツを区別する時に読むパンツ

言うまでもなく、ズボンはズボンです。そうですね? しかし昨今、ズボンのことをズボンと呼ぶのは恥ずかしい、という意見が大多数の認識になりつつあります。ズボンのことをズボンと呼べない世の中になりつつあります。 そもそも、パンツというのはズボンと…

デデデでプププではない話

「Aが落ちていた」と言って、松島が夜に訪ねてきた。22時を過ぎたころのことだ。不安そうな顔をしていた。 「どういう意味?」私は眉を寄せて聞いた。意味が不明であることは勿論、松島が見せる顔そのものもよくわからない。誰かのキーホルダーだとかネック…

剛毅果断は生を掴む

優柔不断は死をも招く。 例えば危険物処理班とかいう花形のチームに配属されたとして、そもそもそんなチームが実際にあるのかはわからないし、花形なのかもわからないが、とにかくそういう班があったとして。というかまず危険物処理班という部門があるとすれ…

最後の竜の閃き

この日、ここ山形県のスタジアムには、日本全国から猛者が集まっていた。各々の県にて多くの者の中からふるいに掛けられた傑作達である。より速く走り、より高く跳び、より遠くに投げる。そんな傑物達の祭典の場に、私たちはいた。 隣を陣取るのは達彦である…

Mirror Mirror

かれこれ四時間は経つだろうか。 目の前の男は、まるで母親のような笑顔で私の前に留とどまっている。 私と彼は初対面で、だけどお互いのことをこれでもかと言うくらい知り合っているような気もする。 それは当然そんな気がするというだけのことで、実際には…

君が笑顔でいられるなら、僕は悪者じゃないはずさきっと

なると巻きの桃色の渦を見ても、私は何とも思わない。 それは薄情なことだろうか。 なるとは時計回りに見える方が表だとか、あるいは裏だとか、そんなことは一度も考えたことがないし、たとえ今それが気になったとしても調べる気にはならないし、ましてやそ…

磯は尖っていて危ないけれど、川の石は丸い。どっちも硬いよ。

ゾウもねずみも、一生のうちに打つ心臓の拍子ひょうしの数はだいたい同じなのだという。 どこかで聞きかじった情報なので、もしかしたら都市伝説めいたうわさ話に過ぎないのかもしれないけれど、もしそうだとしたらロマンもクソも無いので改めて調べることは…

あたしたちのあした

「わたし」は「私」だ。 当然、「私」は「わたし」と読む。 「あたし」はつまり、「わたし」のにせものだ。 「わたし」に並ぶようにして、何食わぬ顔で、にせものは居座り続けている。 「せんたっき」ですら「洗濯機」に変換してくれる柔軟な時代においても…

自由は二次元

「自由でいいのよ」 僕は、夏休み前にクラス全員に向けられたその言葉を、今度は一人で受け止めていた。 担任の岡部先生は、低学年の児童からおかべぇ先生と呼ばれている。今はそのおかべぇ先生と、僕の二人しか教室にいない。居残りだ。おかべぇ先生は自席…

宙からのカレー

夢を見た。 大木にロープを括り付けたいのだけれど、ロープそのものが無い。ならばと私たちは頷きあい、道の傍らに植わっているサトウキビをしゃくりしゃくりと噛み始める。噛んで繊維をほぐすことで、大木に括り付けるための柔らかさを生み出そうとしたのだ…

涙は雨に隠しましょう

〜前回までのあらすじ〜 福岡に引っ越したはいいものの、小トラブルに遭遇し続ける。ようやく生活の基盤が整ってきたところで、最大の試練が訪れた。 ーーーーー 曇天の空、それは彼が表情を変える途中の一場面でしかないことを私は知っていた。これから雨が…

試練は続くよ どこまで? もぉ

福岡移住二日目。日差しと寒さで目覚めた。 部屋はがらんとしていて、あるのは少量の衣類と液晶テレビだけ。唯一増えた荷物は身を包む毛布一枚。カーテンはもちろんのこと、リビングの照明もない。なんたるミニマリズム。 窓の外からは、運動をしているらし…

試練の新生活、開幕

親の介護という重大な任務のために実家に縛られていた私は、兄弟会議の末に一人暮らしの権利を獲得した。ボケた親に振り回されたあの日々は何だったのかと思うほど、なんともあっけない解決だった。 十一月に候補を決め、十二月に物件に足を運び、一月に移住…

明けましておめでとうございますと言わせてください

あけましておめでとうございます。 という時候の挨拶はいつまでつかえるのでしょうか? しばらくぶり、というか2020年に突入してから初めてのブログになるのでこの挨拶で始めさせていただきます。あけましておめでとうございます。 あけましておめでとうござ…