剛のこと
いつか誰かが言っていた。
「ジャニーズの男の子たちは成長を止める薬を打たれている」
確かに言われてみれば、嵐もキンキキッズも、
一体どうしてそんなことをするんだろう、と問うと、
「ジャニー喜多川の趣味さ」
とその誰かは教えてくれた。
目の前でしとしとと涙を垂れる草彅の姿を見て、
涙の数だけ強くなれるよ とはいうものの、
このような場面に遭遇すると、
そうだ。
ポケットティッシュを持っていたことを思い出して、
「あの、どうぞ」
差し出すと草彅は、
「何か……何かありましたか? どうしました?」
ティッシュを受け取ってもらったタイミングで聞いた。
草彅はポツリと言った。
「わからないんだ」
電気が走った。物心ついた頃から見ていた彼に、
「話を聞かせてもらえませんか?」
そう言って、私は草彅の隣に座り込んだ。
見ず知らずの私に、草彅は何から何まで話してくれた。
色々な話を聞いた。僭越ながら、少しだけ私も自分の話をしたり、
「あの」好奇心が勝って、つい口走る「満足しましたか?」
すると、草彅はロボットのようにスッと立ち上がった。そして、
「まんっ まんっ 満足ぅ 一本満足ぅ まんっ まんっ 満足ぅ 一本満足ぅ……」
やめておけばよかったと心から後悔した。
滑稽だ。私はひどく悲しくなって、涙を一筋流してしまった。
薬って一体なんなんだろう。朝露で、尻に敷いたジャケットが濡れていた。