帰してよう
行きたくない飲み会に行って、今帰宅した。
行きたくない飲み会でも、行ってしまえば楽しいこともある。腹をくくらなきゃいけないので、そう自分に言い聞かせて参加した。
そもそも、お酒を飲むこと自体は好きな方だと思う。それなのにどうにも足が進まないのは、ヤツに問題がある。
会場に到着し、まずここで一つため息をつく。
誰も到着していない。
主催者ではないし、家が一番遠いのに、こうなることがよくある。そうなってしまうと、「なんだお前、やる気あるなぁ」とか言われてしまったりする。
それがまたムカつくのだ。第一声に言うこと、それかよ、と思ってしまう。
私の次、二番目に到着したのは森だった。
森とは前々職に出会って以来の仲だ。既婚者で、相手の旧姓が「林」だったので、新婚当時は「森が林を取り込んだ」と事あるごとに言われて随分と辟易していた。私も同じことを言った。
「何個持ってきた?」
森はそう言って私の肩掛け鞄に目をやる。
「今日はちょっとだけ……、三つ」
「は、少なすぎん?」
私は肯定も否定もせず、はは、と笑った。
この会は、年に四度ある洗濯ばさみ定期報告会だ。内容としては、今期購入した洗濯ばさみの数から始まり、最近買った洗濯ばさみの自慢や、洗濯ばさみの入手経路などの共有、となっている。
小耳にはさんだ程度であれば、一体どういう会なんだ、と興味が沸くかもしれない。が、いくつかのサークルなどがそうであるように、この珍妙な会も表向きと実態が大きく乖離してしまっている。
「おい、お待たせ」
三井がやってきた。こいつが面倒なのだ。
「俺、今日、四十五。持ってきたから」
聞いてもいないのに、自分の財力をひけらかす。たかが洗濯ばさみの数十個と思うかもしれないが、そうではない。
この会に持ってきてよいのは、『本物の洗濯ばさみ』に限られている。
オチが思いつかないから、つづくね\0/
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台北に行ってきました。
5/15、つまり昨日。
私、現・中川美希は台北へ向かった。
航空券はいいとして、パスポートの写真と私の顔は、あまりにもかけ離れている。中川美希は女で、私は男だから、当然だ。猿でも間違えないんじゃないだろうか。
そもそも、私は顎髭さえ生やしたままだ。普通に考えて、逮捕モノだ。しかし、一体どういう仕組みか、出国・入国の許可が降りたのだ。
何か浮世離れした感覚のまま、台北の『桃園』という地へ降り立った。
目的すらわからない。
もちろん、何故台湾なのかも知らない。
湿度が高い。沖縄よりもさらにジメリとしている気がする。立ち尽くす私に、現地人らしい男が声をかけてきた。
「Lady boy」
意味はわからないが、確かにそう聞こえた。
とりあえず、首をかしげてみる。
「I・help・you」
彼は単語を区切り、はっきりと発音した。何か、助けてくれるらしい。
「テンキュー」
「You're welcome」
私達はニッコリと微笑みあった。
それから、わずか一日で色々なことがあった。
結果として、私は『Lady boy』になった。そう、彼が一言目に言った通りに。
これからしばらくは、日本産の目玉商品として店に立つ予定だ。
痛! 住手! 救命!
終わり