私が見たのは幻覚なんかじゃありません
私はおばけもネッシーもビッグフットも信じていません。
動画に残っていたからって、あんなのは証拠とは言えないじゃないですか。
でも、信じてください。見たんです。ほら、証拠もあるんです。
小雨の降る冬のある日、私はレンタルDVDの返却のためTSUTAYAにいた。
返却期限内だったので、返却ボックスへそれを入れた。
その帰りである。車に乗り込みドアに手をかけると、私はそれに気が付いた。
ゴミだろうか?はじめはそう思ったが何か感じるものがあり、それを凝視した。
おや、これは……
親指の爪ほどの小さな小さなイエロー。
バナナだ。間違いない。いや、でもまさかそんな……。
このTSUTAYAがある場所にはかつて薄汚れた古い小屋があり、豆球の頼りない光に照らされて、すりガラスに猿が踊る影が夜な夜な投射されていた。
とかいう話を思い出さなかった。そんなの聞いたことが無い。
私は一旦ドアを閉め、周りの反応を窺った。週末の夜である。隣に並んだ車の主はそれに気づくことなく乗降を済ませた。
どれくらいその場に留まっただろうか。私はふと我に返り逃げるようにその場を後にした。
2月23日になると思い出す。あれは一体なんだったのだろうか。
この3枚の写真は重大な証拠だ。公開すれば韮澤潤一郎辺りが飛んでくるだろう。
しかし、私はこれを未だに誰にも見せられずにいる。