産まれた時に赤いと赤ちゃんで、産まれた時に黒いとクロちゃん
窓の外から、赤ん坊の泣き声が聞こえる。
いや、特に怖い話ではない。小さな子供が数人いる、数軒先の家からだ。
その時は、特に気にせずに作業を進めていた。
ひと段落ついて、お茶を飲む。おや、と思った。
未だに赤ん坊が泣いているのだ。
さっきからずっとそうだったのか、泣き止んでいたのが今しがた再噴火したのかはわからない。
記憶を辿ってみるも、やはりどうだったかは思い出せなかった。
もし、仮に、ずっと泣いていたのだとしたらーーそしてそれが、ここからも続いていくとしたらーー私はどう行動するべきだろう。
そう考えだすと、泣き止んだ場合も何か良くない理由があってのことかもしれないと心配になってくる。
幸い、件の家の住人とは顔見知りだ。
伺って異変を確認するのも不自然ではない。
ちょうどその時、スマートフォンが鳴った。スケジュールアラームだと思ったら、電話だ。山城だった。
「あのさぁ」私は一言目からかました。「赤ちゃんがずっと泣いてたらどうする?」
「あぁ?」山城は寝ぼけたような声を出した。
そりゃそうだ。補足説明をする。
「窓の外からずっと赤ちゃんの声が聞こえてたら、どうする?」
山城は主導権を握られたことに文句を言わず、案を出した。
「見に行ったら?」
至極まっとうな意見である。
「なんか、事件っぽかったらどうする?」
「そりゃ警察でしょ。パトカー」
「だよなぁ」
「リムジンパトカー」
「は?」
何だそれは。私がポカンとしていると、電話は突然切れてしまった。
リムジンパトカーを呼ぶのが当たり前なのだろうか。しかし、この集落はなにせ道が狭い。仮にリムジンパトカーを呼んだとしても、家の近くまで入ってこれない。
山城の方で何か理由があって電話が切れた、と私は判断したので、彼からの着信を待った。しかし、それ以降彼からの連絡は無かった。
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