生死を分かつ決断なんだぁ。2
二本の筒と、グニャグニャゴチャゴチャに伸びた配線、それらを結びつけるように、中央には安っぽいプラスチック製の仕掛けが収まっていた。
その中でひときわ目を引くのが、時計のようなデジタル表示の小窓。
私は諦めの境地のような感覚で、ぼうっとお弁当箱を覗き込んでいたが、アジア系観光客の喧嘩をするような会話でふと我に返った。
点滅する機械部は今、『9:56』と表示され、一分ごとに数字が減っている。
このカウントがゼロになった時、何が起こるのか。所見の通りこれが爆弾なら、その結末はやはり爆発なのだろう。
放置して逃げるか、安全な場所に投げ捨てるか、解除するか。
手に取ってしまった以上、放置して誰かが犠牲になるのは嫌だ。十分以内にたどり着く安全な場所も思いつかない。となると、とるべき行動はひとつだった。
どっちを切る?
機械上部から伸びる配線は二色。映画で見るような二者択一がまさに目の前にある。
1・1・0をプッシュし、専門家の意見を仰いだ。
「爆弾があるんです。どっちを切ればいいですか?」
「はぁ?なんの話です?」
電話の向こうの公務員は寝ぼけた声で言う。
私は、オフィス街の中心で爆弾を見つけたこと、制限時間が9分を切ったこと、配線が二本伸びていることを駆け足で告げた。
事態を理解した電話口の相手は、声を引き締めた。
「ご協力願います。言わずもがな、それは爆弾でしょう。線を一本、切っていただきたい」
私は顔だけで頷いてから、慌てて声を付け足す。「わかりました」
「して、線の色は?」
「赤と白のドット柄と、もう一方は淡いマーブル柄です」
「変!」男は叫んだ。「変なの!聞いたことない!」
「お弁当箱に入ってました」
「お弁当箱!」
「ポムポムプリンの絵が」
「ボムボムとかけている!」
不毛な会話の末、爆弾は使命を全うした。
私は死んだ。
警察官にあんな態度をとられると、困ってしまう。
爆発させることにしました。宜しければワンクリックずつお願いします。