生死を分かつ決断なんだぁ。
目の前にお弁当箱が落ちている。
ここは市街地で、たくさんの人が行きかっている。
そのたくさんの人は、電信柱や立ち止まっている人にそうするように、お弁当箱に見向きもせずに自然とよけて歩いている。そこにあるのが当然かのように。
私は迷った。
手に取るべきか、見なかったことにするべきか。
一旦その場を後にしたが、どうしても気になり振り返った。そして、傍らにあるベンチに腰かけて、お弁当箱の成り行きを見守ることにした。
何もせずに動かないものを見守るというのは、非常に根気のいる行為だ。
時間の流れが遅い。時計の秒針は、動くのを渋るようにゆっくりと動く。カッッチ、カッッッチ。カッッッッチ。
お弁当箱が落ちているのだから、お弁当箱を落とした人がいるということだ。まさか野良のお弁当箱というわけではあるまい。
中身は入っているのだろうか? 落ちた時、音はしなかったのだろうか? デザインからして、男物だろうか? しかし、いくら待てども持ち主が現れることはなかった。
私は意を決してお弁当箱を手にした。
重い。ぎっしりと中身が詰まっているようだ。
腐敗臭を覚悟し、えいや、と蓋を開いた。
お弁当箱の中にあったのは食物ではなかった。
爆弾だった。
つづく
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