スウィーテスト多忙な日々

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supernaturalにヤモって

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二分前まで、ヤモリを見ていた。

小さなヤモリだ。今はもう見ていない。カーテンの陰からひょっこりと現れたヤモリは、ぴこぴこ歩いてテレビの裏に消えていった。今も彼はテレビの裏にいるのかもしれないし、私の眼中を逃れた瞬間に消滅してしまったのかもしれない。

 

「そっちへ行かせてくれ」
 無意識に呟いた。そして直後に驚く。どうしてそんなことを口走ったのか、自分でもわからない。だけど自分が放った言葉であるのは確かなようで、「れ」を発した名残が唇を留めている。疲れ果てた敗者の、諦めの言葉のようだった。
 深層の心理がそう言わせたのかと考えてみるも、どうも納得ができない。現実を放棄したいほど疲弊してはいないはずだ。けれど確かに私はそう言った。間違いなく間違いない。それならば、行動に移してみることで何かしらの進展があるかもしれない。
 私は立ち上がり、テレビの裏に回った。

 

 人の目を集める機械の足元にあって人の目に触れることのないその秘境は、数本のケーブルと少量のホコリ、そして小さな蜘蛛の巣で構成されている。ほんのたまに拭き掃除をするので、密林と呼ぶほどの無法地帯にはなっていない。

 しゃがみ込むと、驚いた蜘蛛が巣をブルブルと揺らす。

 

 ふと、声が聞こえた。
 それは聞き覚えのある声で、聞き覚えのあるフレーズだった。
 その声は、テレビを隔てた向こう側、先程まで私がいたソファから聞こえてきたのだ。

 

「そっちへ行かせてくれ」

 

 気がつくと、蜘蛛の巣は私の身の丈を上回るほど大きくなっていた。
 それで私は全てを察したのだ。

 

 

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