スウィーテスト多忙な日々

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君のママに出会った……僕のようにねぇ!!

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気になることはまだまだある。

随分と前になるけれど、SMAPという団体が声を揃えて「失ったものはみんなみんな埋めてあげる」と言っていた。
五人が五人、少し苦い顔をしていた。産道を抜けてまだ数千日の赤ん坊だった私は大いに恐怖したのを覚えている。

 


電車が止まり、目を瞑るとレールから残響が聞こえる。線路沿いのひっそりと静まり返った公園。街灯の間隔は広く、彼らの手の届かない暗闇に蠢くSMAPの五人。
各々の手にはささくれ立った古いスコップが握られていて、ぐもぐもと穴が掘られていく。
声を発するものはいない。彼らは約束を守るため、大きな穴を掘るのだ。

「失ったものはみんなみんな埋めてあげる」
どうしてあんなことを誓ってしまったのか。恋は盲目というけれど、そんな生易しいものではない。恋は奴隷だ。
いや、私たちはそれを望んでいたのだ。ならば奴隷という表現は少し正しくない。豚。私たちは恋の豚だ。まるでトリュフを探すように、穴を掘り続ける豚。

そこへ彼女がやってくる。
涙でアイメイクは流れ落ち、抱えた何かの重さで膝が笑っている。上半身と下半身が真逆の感情で分断されていた。
「さぁ、ここへ」
木村が穴を手のひらで指し、香取は黒い幕に覆われた何かを受け取る。
どさり。
深夜の公園に、物騒な音が響く。木々がすぐさま音を吸い取った。
落下の衝撃で、幕の一部がはらりとめくれる。

彼女は声に出さずに呟く。ありがとう。確かに愛をもらった、と。
そして朝を迎える。昨日と変わらない朝だった。


 単純な解釈だと、彼らの告白はこういう風に捉えられる。
 私は木村に手紙を送った。「私は事を荒立てたくはありません」文章はそう締めくくった。要求も知れた程度だ。自己弁護も甚だしいが、幼さからの過ちだった。
 あの頃大量に届いた非通知着信は、その返答だったのではないかと思う。

 そして今日だ。フロントガラスのワイパーに、ある文章が挟まっていた。彼らは私を忘れていなかった。我が家に直接連絡が届くということは、住所が割れているという意味でもある。

 迂闊だった。「君を守るため そのために生まれてきたんだ」私は、そんな思想を持った彼らに喧嘩を売ってしまった。

 彼らはきっとやってくる。私はそれが恐ろしくて、目を閉じると隣で肉食獣の鼓動を感じるのだ。 

 

 

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