スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

誰かの役に立つことは書かれていません……

試練の新生活、開幕

 

f:id:tthatener:20200204182809p:plain

 

親の介護という重大な任務のために実家に縛られていた私は、兄弟会議の末に一人暮らしの権利を獲得した。ボケた親に振り回されたあの日々は何だったのかと思うほど、なんともあっけない解決だった。

十一月に候補を決め、十二月に物件に足を運び、一月に移住。向かう先は県外、コンパクトシティと称される「福岡県」だ。利便性が良さそうで間違いなく東京より人口密度が少ない。そして何より家賃が安い。選択肢はここ以外考えられなかった。

十二月の半ばには何の困難もなく物件も見つかり、契約を済ませた。そして引っ越しのために荷造りをして二日、風邪を引いた。

 

正月に引いたおみくじのことが頭によぎる。

―転居 急ぐな

余裕ぶって転居日の三日前まで荷造りに手をつけなかった自分が悪いに違いないのだが、早速おみくじの予言が当たり、目指す北方の空にうっすらと雲がかかった気がした。

しかし予定は待ってはくれない。私は家具の裏にいたダニだかホコリだかのせいで腕や腹に湿疹をこさえ鼻水を垂らしながらも荷造りを進め、ついにその日が訪れた。

 

バックパックを背負い、キャリーを引く。山下清が画板で二宮金次郎が薪、私は数日分の衣類と液晶テレビである。

鼻をズビズビいいながら物件にたどり着き、荷物を置くと早速買い物へ向かう。ベッドを調達しなければいけない。当面何がなくともベッドだけは確保しなければ。最重要アイテムだ。しかし、家具屋に着いた私に非常な事実が伝えられる。目当てのベッドは一週間後にしか届かない、と。

なんてこった。しかし、たった一週間のために簡易的な寝具を買うのは気が引ける。ベッドが届いたら不要になってしまうし、そうなると仕舞うスペースも必要だ。ただただ邪魔になる。さてどうしたものか。

 

あれこれ考えた末、私は天神の街へ酒を飲みに行くことにした。現実逃避である。酒を飲んで飲んで、焼き鳥を食って食った。今日から自由だ。そう考えると食指は進み、べろんべろんに酔った。

そして帰宅、訪れる現実。私は着てきたスウェットを枕にし、買ってきた毛布で体の上下を巻くようにしてフローリングの上で眠りについた。

鼻が出て、熱がある。喉は砂漠のようだ。

 

―転居 急ぐな

 

そのお告げは、ベッドのない生活や風邪に関してのものだったのかもしれない。しかしそれだけを警告するものではなかった。

 

次回 「試練は続くよ どこまで? もぉ」

 

 

宜しければワンクリックずつお願いします。

1.人気ブログランキング

2.人気ブログランキング - にほんブログ村