スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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試練は続くよ どこまで? もぉ

 

 

福岡移住二日目。日差しと寒さで目覚めた。

部屋はがらんとしていて、あるのは少量の衣類と液晶テレビだけ。唯一増えた荷物は身を包む毛布一枚。カーテンはもちろんのこと、リビングの照明もない。なんたるミニマリズム

 

窓の外からは、運動をしているらしい学生たちの掛け声が聞こえて来る。なんとも威勢がいい。すぐ目の前に中高があって、野球部が練習するのを通りがかりに見たのできっとそれだ。きっと強豪校なのだろう。

しばらく体温が上がるのを待ってトイレに足を運んだ。

自分専用のキッチンに自分専用の風呂場、そして自分専用のトイレ。ああ、一人暮らしとはなんと素晴らしい。

幸い、福岡の寒さは耐えられないほどでもないし、これからしばらく月を送れば桜も見られる。楽しみでしょうがない。今日は何を買い足そうか、と便座に掛けながら一日のスケジュールを考えていると、不意に足先に違和感を覚えた。

水だ。

そういえば、と昨日のことを思い出す。トイレのドアを開くと、足元に小さな水たまりができていたのだ。換気扇から水漏れでもしているのだろうかとよくわからない予想をして拭き取ったのだけれど、水洗のレバーをひねるとすぐにその原因が分かった。パイプの接続部から水が漏れている。

わずかな床の傾斜に従って、漏れた水が足元まで移動してきているのだ。きっとゴムパッキンが劣化しているのだろう。管理会社に連絡すると、すぐに業者の手配をしてくれることになった。大分リフォームされて綺麗になっているものの、所々に年季の見える物件だ。これぐらいは仕方ない。

本当の試練は、その数日後に待っていた。

 

その日、私は福岡空港近くの複合施設に足を運んだ。個人間で不用品の取引をするサイトで自転車を安価で譲ってもらう約束をしていたのだ。

約束の時間になり指定の場所へ向かうと、すぐにそれらしい女性を見つけた。

挨拶を交わすと、「あれです」と彼女は数歩先の駐輪スペースに停めてある一台を指さした。写真のイメージよりも随分と年季の入った自転車だった。しかし、ここまで来て「やめておきます」とも言えない。わざわざ電車を乗り継いで、随分と歩いた。そうでなくとも近所の移動手段は確保しておきたい。

「じゃあ、これでお願いします」

約束の金額を手渡し、私は自転車に跨った。

空が濁り始めている。急がなければ。

 

最終回「涙は雨に隠しましょう」

 

 

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