スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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meet you again

冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに、二年近く前に賞味期限の切れたタコライスもとが入っている。
タコライスの素とは、タコライスの上にのっているあの味付けされたひき肉がパウチされたレトルト食品だ。
ご飯の上にかけてあげればすぐにタコライスが出来上がるし、ご飯の下に敷いてあげてもタコライスが出来上がるだろう。
タコライスの素とご飯が組み合わさってはじめてタコライスが完成されるのであれば、ご飯の方だって「タコライスの素」と言ってもいいのではないか、という議論が町中まちじゅうで交わされている。町中というのは私の住む町のことだから、信じていない人は一度私の町に来るといい。野犬の多い町だ。


つまり、私が言いたいのはそれではない。
冷蔵庫のあまり開け閉めをしないポケットに入れてしまったばっかりに、あまり開け閉めをしないまま、タコライスの素の賞味期限を切らしてしまった。これをどうするべきか、ということだ。


なんとかのなんとか という理論がある。
例えば賞味期限がたった今切れた食材があるとしても、その一秒後に食べても問題は無いだろうし、そのさらに一秒後だって問題無い。ということはいつまででも……、というものだ。
その理論に従って考えれば食べないという選択肢は消え失せてしまうのだが、何せ二年近く前に期限が切れてしまっている。


私はたびたび食材の期限を切らしてしまい、その度に「○○ 賞味期限切れ」と検索をして誰かの見識に頼ろうとする浅はかな人間だ。
「夏場なら何日ぐらいもつ。冬場なら~」という風に解説するサイトもあれば、知恵袋などでは「食べられれば食べられる」と身も蓋もないようなことが書いてあったり、「そのたかが数百円の為に腹を壊す覚悟があれば~」と半ば呆れを含んだ愛のある回答が書かれていたりする。
きゅる、と腹が鳴る。
食べるか否かを考えている最中、私の腹の中では噂を聞き付けた腸内生物たちが大暴れする準備をしているのだきっと。
そう。本当はわかっている。
あのタコライスの素は捨てるべきだ。捨てる罪悪感は、私の罪悪が引き起こしたのだから当然の報いだ。


だから決めた。明日、タコライスの素は捨てよう。
そして、再び私の下に彼を迎え入れる日が来るなら、もっともっと大切にしてやるんだ。
ああ、もちろんさ。安心して。
うん、大事にするよ。食べたりするもんか。