炊飯器とチェーンソー
炊飯器と、チェーンソーを買った。
何の気なしに友人にその話をすると、どういうこと? と彼は呆けた顔で返す。
どういうこと? とはどういうことだ。今言ったじゃないか。空の炊飯器みたいに、頭に何も詰まっていないんじゃないか。
それは言いすぎだ。
私はスマートフォンを操作し、撮影した写真を見せた。
紛れもなく、炊飯器とチェーンソーだ。
何に使うんだ、と彼は訝る。
何に使うんだ? とはどういうことだ。言わなくてもわかるじゃないか。
炊飯器は米を炊くもの。チェーンソーは木を切るもの。豆は投げるもの。
まさか炊飯器を頭に被ってチェーンソーでメレンゲを立てるとでも思っているのだろうか。
炊飯器の使い道を説明してもしょうがないので、「チェーンソーで木を切るんだよ」と教えた。当たり前すぎて逆に怪しまれるんじゃないか。裸になって、これで前を隠して写真を撮るんだ。とでも言えばよかったのかもしれない。
どこの木を切るんだ、と彼は放った。
もはやロボットだ。それらしい返答をするプログラムに依存しているに違いない。
「できるだけ硬い木だよ」と答えると彼は、そうかぁ。とにっこり笑った。
私はアメリカ女がやるように、目だけで斜め上を見て口を開けた。