スウィーテスト多忙な日々

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いえなきこ


あの頃からずっと、家なき恐怖が私を襲う。今となってはずいぶんと慣れた。そりゃあもう大人だし、当然と言えば当然だが。
しかし、家なき恐怖はいつも突然訪れる。その度に私は小さく飛び上がる。


三歳だか四歳だか五歳だかはわからないが、私がそれぐらいの歳の頃に、我が家は引っ越した。
距離にして約五秒。斜め向かいに新築した家だ。
各兄弟には部屋が割り当てられ、結果的に、私が一番広い部屋を使うことになった。
最終学歴の学校を卒業するまで、恐怖は毎日顔を出した。


朝、昼、晩、深夜。時間帯はまちまちだ。
東京で就職し、その数年後帰郷しても、やはり家なきは変わらず私に声を掛ける。


「バキッ」
今夜も家が鳴く。
あの頃は、お化けか何かと思い、眠れない日もあった。
我が家の「家鳴き」はいつまで経っても続いている。
それは自然な現象なのかもしれないし、老朽化だとか、もしかするとあの頃とは別の意味で鳴いているのかもしれない。

 

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木目が顔に見えて怖いアレが怖い