ライフハックと友情とファンタジーとサスペンスを込めた日記がわずか653文字で書けた
やはり、便利で快適に暮らしたい。
便利な世の中だから、それを手助けする機械があって、そういった機械には大抵リモコンが付いている。
便利だけど、邪魔だ。驚くほど身勝手で暴力的な意見かもしれないが……。
だから今、この記事はリモコンに隠れて書いている。
小箱にまとめようと思っても、なかなかどうして、一筋縄ではいかない。
気が付くと散乱しているのだ。これは良くない。
検討の結果、これを、
こうして、
こうして、
こうすることにした。
悪くない。数日間経っても、所定の位置は守られている。
しかし、一つ問題があった。
テレビリモコンだけ、磁石のS、N極が逆になっていた。
つまり、他の三人は気分次第で位置を入れ替えられるのに、彼一人だけ位置が決まっているのだ。
なんてひどいことをしてしまったんだろう。
私はテレビリモコンを手に取り、接着剤に爪を立てた。
しかし、彼は彼なりに職務を全うしていて、なかなか剥がれてくれない。
うんうん唸っている私の耳に、声が飛び込んで来た。
「ありがとう。でも、このままでいいよ」
すぐに気付く。テレビリモコンが、喋ったのだ。
「僕、右側が好きなんだ。そもそも」
私はキョロキョロと周りに目をやる。
「だから、このままでいいよ」
彼がそう言うと、何かの合図をするように、テレビの電源が入った。
ふぅ、と一息ついて、私は小さく笑う。工具箱からマイナスドライバーを取り出し、リモコンと磁石の間にこじ入れた。
お前の為じゃない。俺の為だ。
テレビリモコンは悲しみ、怒り、爆発した。
私は死んだ。死んだのは、その時が初めてだ。
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