おいらの仲間はバケモンなのさっ
「彼女ができた、って言ったっけ?」
オロチが言った。
「え、聞いてない。そうなの」
私は顔をしかめた。
オロチと私は高校時代からの仲で、大人になった今も一番の友達だ。
彼は昔、二股ならぬ八股をしていたらしい。だからオロチだ。本人に言うと怒りそうなので、心の中だけでそう呼んでいる。
「どこで知り合ったの?」
「職場の人から紹介されて」
なるほど。彼の職場はとても大きな施設の中なので、そういう機会は多いだろう。あれ、そういえばこいつ、数か月前に年下に告白してフラれたって言ってたばかりだよなぁ。
「へぇ、どんな人?」
「韓国人なんだけど」
「韓国人??」
よくもそんな面白そうな話を今まで黙っていたものだ。同じアジア人とはいえ、国籍の違う人間と付き合うのはあれこれと面倒そうだ。そういえば、頭の中を探っても外国人と付き合ったり結婚している男の知人は一人もいない。貴重だ。
「もう別れそうなんだけどさ」
「どういうこと??」
なんなんだこいつ。いつのまにこんなわんこそばみたいに話すようになったんだ。まだ一つも飲み込んでいない。私の口の中はパンパンだ。
「待って待って、メモが必要になりそう」
「タイと韓国のハーフらしくて」
「ちょっと」
「日本人の男と付き合うのは初めてだけど、日本人の女とは付き合ったことがあるんだって」
「やめて!」
「へそにピアス空いてるんだよね」
「ぎゃあ!」
一体どこまでが本当で、どこからが嘘なのだろう。
私の知る限り、オロチは嘘をついて話を盛り上げる腕は持っていないし、かといってこの話が全部本当だというのも、少し信じにくい。
オロチはなおも新情報を羅列し続ける。
「待って!」
歌詞にラララって入る歌を探そうよ、ほら、と私が言うと、彼はやっと治まった。
だいたいの面倒事は、これで解決してきたのだ。
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