スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

誰かの役に立つことは書かれていません……

そういうの、だめだし。

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ブログを始めた、と友人のたかあきに報告した。

「へぇ」

私は度々ブログを始めたりやめたりしている。そのことも、たかあきはご存じだ。

「ちょっと、見せてよ」

足首を持ち上げてくれるタイプのチェアに寝そべり、彼は私に手を突き出した。

 

元々そうしてもらうつもりだ。スマートフォンを5タッチし、アプリを開いて手渡す。

たかあきは険しい顔で指をゆっくり動かし、しばらく画面を見つめる。

それを数回繰り返す。一瞬、ニヤリとした気もするし、ピクリともしていない気もする。

 

「これ、誰が見てるの。何人が見てるの」

 私は差し返されたスマートフォンを受け取る。

「一日、三十人か四十人くらい」続けて尋ねた。「どう?」

「どうって……よくわからん」たかあきはむっつりした顔で言う。「日記なの?これ」

「うん、まぁ、日記かな。冒頭以外はだいたいウソだけど」

 

「反応とか、あるの」

「まぁ、たまに」

 画面をスクロールしてみる。あった。その記事へのコメントは一つ。「( ・д・ ポカーン…」だ。

 たかあきはコメントを一瞥して言う。

「この人の気持ち、よくわかるよ。みんなおいてけぼり。そりゃ口も開くだろ。よくわからないからコメントも書きにくいんだよ」

「じゃあ、どうしたらいいのさ」

 口をとがらせて、ついでに舌をニョロッと伸ばす。舌の運動だ。

 

「なんかもっと役に立つ情報とか書いたらいいだろ。株式がどうとかさ」

「いやだよ」

「なんで」

「なんでかって!?」

 さっと立ち上がる。シャンデリアの中心に頭がすっぽりと入った。天井が低いわけではない。なにせ身長が3メートルある。

「僕は――僕はなぁ! そんなの書きたくないんだよ! お役立ち情報だったら何百もあるさ! 僕は! そういうことは! 独り占めしたいんだよ! 美味しい蜜は一人で吸う! 利益は独占だ! 自販機の底に磁石が貼り付けてあってねぇ、小銭はそこにくっついてますから!」

 

 ついつい、口を滑らせてお得情報を漏らしてしまった。ハッとして表情を覗う。

 眩しい。――そうか、シャンデリアだ。

 クッとしゃがむと、たかあきと目が合う。ポカーンだ。

 

「22時45分!」私は叫ぶ。「たかあき! 帰れ!」

 たかあきは、未成年だ。

 

 

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