幽霊は赤ん坊を産むか
我が家に霊が出た。
私は恐れおののののいてすぐさま高名な霊能者を呼んだ。高名な霊能者というのはただの巧妙な霊能者の場合もあるらしいので、果たしてその人が有能なのかは今のところまだわからない。
「霊ですとな」
霊能者はその日の内に訪れて、我が家の方々を見て回った。
こちらから呼んでおいてなんだが、私は成人してからというもの、霊の存在を信じていない。
とある雑誌で、「お尻やおちんちんを出した霊がいないのがその証拠だ」と言っていたのが実に心に響いたからだ。
「お尻やおちんちんを出した霊の心霊写真や動画もありますよ」
霊能者は力強く言う。
「それがあまり世に出回っていないだけです」
私はあっさりと、それはそうかもしれない、と思ってしまった。確かに、驚かせる事が課題の恐怖番組で幽霊のお尻を見せたところで、何が何だ、というお話しではある。
改めて鳥肌を立てた。
「して、霊障があったとか?」
霊能者は平然とした態度で尋ねる。
そうだ。証拠がある。これがあるから呼んだのだ。一刻も早くその真贋を鑑定してほしい。
私は霊能者を先導して、廊下を進み、階段を上がって、ある部屋のドアを開けた。
「ほら、これです」
私が指さす先には、赤ん坊のものと思しき足形がある。それはどうやら、窓の外から押し付けられたものらしい。溜まったガラス窓の汚れをこれ幸いとばかりに、はっきりとくっきりと足の跡がつけられている。
我が家に赤ん坊はいないし、そもそもここは二階で、誰かが外に立てるような足場もない。部屋掃除のさなかに、消えないこの汚れを見つけて、ゾッとしたのだ。
霊能者は私がそうしたように、窓の内側にそっと触れて、確かに外からつけられたモノであることを確認する。それから窓を開け、身を乗り出してあちこちを舐めまわすように見た。
霊能者は唸る。
「背が高いですねぇ」
「そういう事じゃないんですよ」
そういう事じゃ、ないんですよ。
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