スウィーテスト多忙な日々

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バッグ・バーガー・バーゲスト

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ハンバーガーが食べたい。
肉が二枚で、真っ黄色のチーズが挟まったチーズバーガー。一口噛むごとに、ジャンクジャンクと音が鳴りそうな濃い味のバーガーを。

バーガーショップの前を通ったわけでも、テレビで特集をしていたわけでもない。
あいつのアイコンのせいだ。
あいつがどこに何とコメントをしていたのかさえ覚えていないけれど、あいつのアイコンのチーズバーガーが強烈に目に残った。
SNSのアイコンは、個人を識別するいわば顔のようなものだ。アニメ好きならアニメアイコン鉄道好きなら車両がアイコンになっている。それがどうしてチーズバーガーなんだ。傾向からするとハンバーガーマニアなんだろうけど、そんな人がいることを知らない。

「なんでチーズバーガーなの?」
あいつに聞きたい。君のことが気になってしょうがないんだと伝えたい。そして最低でも一時間は語らいたい。
キミのおかげでハンバーガーが食べたくなったよ。一人の人生を動かしているよ。突然そんなことを言われたらきっと困ってしまうだろうけど、そんなことを報告したい。私がハンバーガーを食べるということはハンバーガー屋さんが利益を得るということにもなる。そしてそれらのお金で生活をする従業員がいるから、私以外の数名をも幸せにしてくれることになる。そんなことを伝えたい。
だけどあいつをどこで見かけたかももう覚えていなくて、その希望は既に絶たれている。遺作への感動を本人に伝えられないようなもどかしさだ。

選択肢は無い。道はたった一つ。私は車を走らせ、マクドナルドへ向かった。
ダブルチーズバーガーを二つとエッグチーズバーガーを一つ買う。
移動の間も惜しくて、店内で暴力的に食べた。ハンバーガーは二つだと少ないけれど、三つだと少し多い。だけど「最期の半分が食べられないよう」と泣きべそをかくことはない。私はそんなことでは泣かない大人になったのだ。特に努力した記憶もない。そんなことで褒められても少し困ってしまう。
十分と掛からず食べ終えて、腹がいっぱいになった。

そして賢者の時間が訪れる。
私はどうしてあんなに興奮していたんだろう。あの数時間、ハンバーガーを食べる事だけが生きる目的になっていた気がする。それは初めての経験で、思い出すと少し恥じらいさえある。頭の中がスカスカなバンズになっていた。
冷めた頭にアイコンが浮かぶ。
アイツ、なんでチーズバーガーなんだ。
意味が分からん。

 

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