スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

誰かの役に立つことは書かれていません……

しょっかくを使う

触覚の本を読んでいると、面白い実験が紹介されていた。 向き合った二人が、目を閉じて握手をする。そして、「相手の手を自分が握っている」と思うタイミングで、空いている手を上げる。この時、意図的に握る強さを変えてはいけない。この実験で何が起きるか…

supernaturalにヤモって

二分前まで、ヤモリを見ていた。 小さなヤモリだ。今はもう見ていない。カーテンの陰からひょっこりと現れたヤモリは、ぴこぴこ歩いてテレビの裏に消えていった。今も彼はテレビの裏にいるのかもしれないし、私の眼中を逃れた瞬間に消滅してしまったのかもし…

バッグ・バーガー・バーゲスト

ハンバーガーが食べたい。肉が二枚で、真っ黄色のチーズが挟まったチーズバーガー。一口噛むごとに、ジャンクジャンクと音が鳴りそうな濃い味のバーガーを。バーガーショップの前を通ったわけでも、テレビで特集をしていたわけでもない。あいつのアイコンの…

街をさる

七月十一日、未明。街で何かを見ました。彼は私の目の前でタクシーを降り、その場にしゃがみ込みました。こんな時間に何をしているんだこの老人は、と私は眉をひそめます。降車する様さまは、少し不健康な老人といった様子でした。もしかして体調が悪いのか…

夏のショーケース

あれはペンギンだったのか、恐竜だったのか。 あつのなつい日、私は外を歩いていた。半袖に短パンで、手にはソーダのアイス。中にはバニラが入っている。 その日は少しおかしな日で、道路にまで砂が押し寄せていた。海に囲まれた小さな島は、浸食した砂のお…

社交ダンスじゃないんだよ

死体が送られてきた。送り主は兄。彼は東京に住んでいて、借家の車庫に突起をつけてボルタレンみたいな名前のトレーニングをするのが趣味の変な常識人だ。兄は、定期的に荷物を送ってくる。洋梨が一番多くて、あとは使っていないゴルフクラブだったり、使わ…

急がなかったせいで急ぐ

今日は、時速0kmで思考していた。その影響か、あと一時間足らずで日付が変わってしまうので、急いでブログを書いている。急いで書く記事としてふさわしい内容といえば、やはり「急ぐこと」そのものについてだろう。日常生活において、自分自身の会話や行…

知っててよかった七夕の

七月七日。七夕です。偉い神様であるお父さんに怒られて隔離された織姫と彦星が、年に一度だけ会える特別な日です。学校や商業施設、家庭でも、おめでたい記念日にあやかって願い事を短冊に認(したた)めますね。恋、勉強、仕事…短冊を見ていると微笑ましく…

う、ウチの、ウチの猫知りませんかぁ?

猫は可愛い。昔は犬を飼っていた。シェットランドシープドックみたいな犬、ラッシーが一匹目で、ダックスフンドのチャチャが二匹目、ミニチュアダックスのココアが三匹目だった。どの犬も人懐っこくて、いつもバカみたいに笑っていて、人間の姿を確認すると…

池へGO

我が村には、大きな池がある。数字にしてみると大した大きさではないかもしれないけれど、小さな村に比べると大きな池だ。ネムリ池と呼ばれている。 池と沼の違いはなんだろう。それが水質だとか濁り具合で分けられるのなら、ネムリ池は池の日もあれば、沼の…

そのたった数センチで

友人に会った。彼女とは学生時代に同じ学科だったのだけれど、当時の私は――あるいは彼女も――こうして休日に頻繁に会う仲になるとは思わなかった。グループが違ったので学生の頃はほとんど話をしたことがなくて、「同年代には興味ないわ」という少しクールな…

三角屋根は魔女の家

夢の話をしたからか、夢を見た。舞台は、私の実家のある部落だった。自動販売機も商店もない、商業から見放されたような眠った部落。人が少なくて、昼よりも、夜の方が騒がしい。生き物や自然が生む、気分が落ち着く騒がしさだ。そこで、私は恩師の後をつけ…

あなたの隣に誰かいる

よく死ななかったよなぁ、と思うことがたまにある。海水浴中に「離岸流」という沖へ向かう潮に流されたり、海から上がったら隣の友人の腕に海蛇が絡みついていたり、居眠り運転をしてしまって中央分離帯に突っ込みかけたり、車に轢かれたり。 脳内のパニック…

合わせもの離れもの

「メッシュキャップの上からベロベロ舐められる」 さて、これが何の意味だか分かるだろうか。ものすごく気味の悪い一文で、なかなかイメージのしようがない。「舐められる」というのが(誰かに)舐められるという被害者側の立場なのか、舐めることができる、…

涙の数だけゴマを食べるよ

このご時世、人間関係を築く上で上手に「指摘」をするということはとても大切で、かつ難しい問題だと思う。冷静に指摘するだけでは部下はついてこないかもしれないし、例え付き合いの長い友人に対しても、マナーの悪さを指摘することは相当な決意がいる。ま…

頑張ってる途中

信じられないことに、もう一年の半分が終わってしまう。信じられない。生きていれば時間は勝手に過ぎていくから、それは当たり前のことなんだけれど、やっぱりどうしても「そりゃちょっと早すぎだよ」と焦ってしまう。元旦に生まれた子供はもう歯が生え始め…

内のぉ、人と書いてぇ、肉と読みますぅ。

冷凍庫から、外を新聞紙に包まれた肉が出てきた。冷凍庫で食材を漁っていると、小分けにしたご飯の下からその肉は出てきて、私は「しまった」と顔をしかめた。それは近くに住む親戚からの頂き物で、二週間だか三週間だかそれぐらい前の物だ。いや、一か月だ…

因果応報ほうほうへえへぇ物語

蛇が死んでいた。 食料を買いに車を走らせ、玉ねぎと納豆と鶏肉と牛乳を買った。何かメニューが頭に浮かんでいたわけではなくて、これらの品は常に切らさないように常備している。 今日は何を作ろうかと考えながらハンドルを握っていて、あと二回角を曲がれ…

本当においしい沖縄のタピオカドリンク店ベスト3の紹介(ではない)

「タピオカァ! タピオカジュースゥ!」 憎たらしい口調でユウタが言った。ここ数日ずっとこうだ。「うるせぇ!」私は屋台から出て、拳を振り上げた。「ぶん殴るぞ!」 もちろん本気ではない。子供からタピオカ呼ばわりされたからと言って、ぶん殴るほど私は…

今年は今年だけ。夏も夏だけ

悲しい。ただひたすらに悲しい。それはしばらく忘れていた感情で、私は少し動揺してしまった。何かにものすごく腹が立つことはあっても、何かをものすごく悲しく思うことはなかったな、と気が付いた。そして、ものすごく腹が立つことよりも、ものすごく悲し…

顔の見えない相手から金を受け取るのさ

我が家の部屋の隅でホコリを被っているあれもこれも、どこかの誰かが探し回っているものだ。革靴が一万円で売れたり、コーティングの剥がれたサングラスが五千円で売れたりする。その日アプリにメッセージが届いたのは、新しいモデルに買い替えて以来クロー…

走れ。走っていい場所を。

「おむちゃんとおまるくん、結婚したらしいですよ」 バイトの湯川が、はがきを手に言った。 生きていると悩みは絶えないもので、それがあまりに大きいと自分を責めてしまったり、生きる希望さえ失ってしまうこともある。 しかし、それが当人にとっていかに重…

ごめんなさい、ちょっとうんこの話をします

ラジオを聴いていると、うんこの話をしていた。 ラジオというのは少し特殊なメディアで、うんこやちんこ、童貞、包茎という単語が平気で出てくる。話の流れによっては、三十分以上もその話をしていることもある。ごくポピュラーな話題だ。そんな話を聴いてい…

剛のこと

いつか誰かが言っていた。「ジャニーズの男の子たちは成長を止める薬を打たれている」確かに言われてみれば、嵐もキンキキッズも、世界の木村も身長が低い。一体どうしてそんなことをするんだろう、と問うと、「ジャニー喜多川の趣味さ」とその誰かは教えて…

決戦は金曜日

刈りはまだ終わっていない。 洗濯物を干しながら、私の視線は十メートル先の塀の外に向いている。鈍い色の空を背景に、高く伸びた竹がゆらゆらと風に揺れる。そしてその竹から、次の宿主を探すように長く伸びたツルがぶらりと垂れ下がっている。二週間前にと…

バカはバカなりにバカ

1、2、3、4、5……エクセルを下にスクロールしながら、数を数えている。6、7、8、9、10…… どうしてこんなことをするのかというと、それは昨晩のひらめきに端を発する。真っ暗な部屋でアイマスクと耳栓を装着し、完璧な状態でうとうとしていると、突…

あなたに不可能はありません

「クールビズとビールクズ」 ふと思いついた今晩のテーマだ。 それがどんなにしょうもなくても、思いついたテーマを捨ててしまうのは惜しい。だけどすぐに腐ってしまいそうで、使わずに取っておくのも控えたい。 結局すぐに使ってしまうしか手はないと思い、…

セミスタート

あの本って、どうだったっけ。と思い、女流作家の小説を本棚から引っぱり出してパラパラとページをめくっていた。探している場面まで読み飛ばそうと思っていたが、気が付くと目はしっかりと文字を追っている。だけど二、三度読んだ本だけあって、スラスラと…

ゴジラだったら、どう思う?

かれこれ十年近く前から不思議に思っていることがある。 その光景は物心ついたころから何千回と見てきたけれど、ある時から「不思議だな」と明確に意識し出した。きっと、一度県外に出たから、故郷の風景にも少し興味を持てるようになったのだろうと思う。 …

やせたかなしいと書くとやなせたかしファンが見てくれそう

私のスマートフォンには日課が二つある。一つは毎日鳴るように設定したスケジュールアラーム。起床時間と睡眠時間、その他いくつかの時間を管理してくれている。 もう一つが、謎の通知音。毎日朝の八時六分になると、「ピロリン」とiphoneデフォルトの通知音…