スウィーテスト多忙な日々

スウィーテスト多忙な日々

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計ったような博多の母方の歯型

悩んだ挙句、肩に突起をつけることにした。 ガンダムみたいでかっこいいとか、ショルダー攻撃の威力を上げたいだとか、拘束された時に突起であごを掻きたいだとか、そんな馬鹿げた理由ではない。 トートバックがズレ落ちるのだ。 普段からトートバックを持ち…

うん、チーズ。

たまに、家の中で異臭がすることがある。 キッチンに置いているかごの底で人知れず腐ってしまっている野菜があるとか、どこから入り込んだのか小さなネズミが置きっぱなしの衣類の陰で往生しているとか、考えられる理由は様々だ。 そういう時はごく一部の、…

ズボンとパンツとパンティとショーツとショートパンツを区別する時に読むパンツ

言うまでもなく、ズボンはズボンです。そうですね? しかし昨今、ズボンのことをズボンと呼ぶのは恥ずかしい、という意見が大多数の認識になりつつあります。ズボンのことをズボンと呼べない世の中になりつつあります。 そもそも、パンツというのはズボンと…

デデデでプププではない話

「Aが落ちていた」と言って、松島が夜に訪ねてきた。22時を過ぎたころのことだ。不安そうな顔をしていた。 「どういう意味?」私は眉を寄せて聞いた。意味が不明であることは勿論、松島が見せる顔そのものもよくわからない。誰かのキーホルダーだとかネック…

剛毅果断は生を掴む

優柔不断は死をも招く。 例えば危険物処理班とかいう花形のチームに配属されたとして、そもそもそんなチームが実際にあるのかはわからないし、花形なのかもわからないが、とにかくそういう班があったとして。というかまず危険物処理班という部門があるとすれ…

最後の竜の閃き

この日、ここ山形県のスタジアムには、日本全国から猛者が集まっていた。各々の県にて多くの者の中からふるいに掛けられた傑作達である。より速く走り、より高く跳び、より遠くに投げる。そんな傑物達の祭典の場に、私たちはいた。 隣を陣取るのは達彦である…

Mirror Mirror

かれこれ四時間は経つだろうか。 目の前の男は、まるで母親のような笑顔で私の前に留とどまっている。 私と彼は初対面で、だけどお互いのことをこれでもかと言うくらい知り合っているような気もする。 それは当然そんな気がするというだけのことで、実際には…

君が笑顔でいられるなら、僕は悪者じゃないはずさきっと

なると巻きの桃色の渦を見ても、私は何とも思わない。 それは薄情なことだろうか。 なるとは時計回りに見える方が表だとか、あるいは裏だとか、そんなことは一度も考えたことがないし、たとえ今それが気になったとしても調べる気にはならないし、ましてやそ…

磯は尖っていて危ないけれど、川の石は丸い。どっちも硬いよ。

ゾウもねずみも、一生のうちに打つ心臓の拍子ひょうしの数はだいたい同じなのだという。 どこかで聞きかじった情報なので、もしかしたら都市伝説めいたうわさ話に過ぎないのかもしれないけれど、もしそうだとしたらロマンもクソも無いので改めて調べることは…

あたしたちのあした

「わたし」は「私」だ。 当然、「私」は「わたし」と読む。 「あたし」はつまり、「わたし」のにせものだ。 「わたし」に並ぶようにして、何食わぬ顔で、にせものは居座り続けている。 「せんたっき」ですら「洗濯機」に変換してくれる柔軟な時代においても…

自由は二次元

「自由でいいのよ」 僕は、夏休み前にクラス全員に向けられたその言葉を、今度は一人で受け止めていた。 担任の岡部先生は、低学年の児童からおかべぇ先生と呼ばれている。今はそのおかべぇ先生と、僕の二人しか教室にいない。居残りだ。おかべぇ先生は自席…

宙からのカレー

夢を見た。 大木にロープを括り付けたいのだけれど、ロープそのものが無い。ならばと私たちは頷きあい、道の傍らに植わっているサトウキビをしゃくりしゃくりと噛み始める。噛んで繊維をほぐすことで、大木に括り付けるための柔らかさを生み出そうとしたのだ…

涙は雨に隠しましょう

〜前回までのあらすじ〜 福岡に引っ越したはいいものの、小トラブルに遭遇し続ける。ようやく生活の基盤が整ってきたところで、最大の試練が訪れた。 ーーーーー 曇天の空、それは彼が表情を変える途中の一場面でしかないことを私は知っていた。これから雨が…

試練は続くよ どこまで? もぉ

福岡移住二日目。日差しと寒さで目覚めた。 部屋はがらんとしていて、あるのは少量の衣類と液晶テレビだけ。唯一増えた荷物は身を包む毛布一枚。カーテンはもちろんのこと、リビングの照明もない。なんたるミニマリズム。 窓の外からは、運動をしているらし…

試練の新生活、開幕

親の介護という重大な任務のために実家に縛られていた私は、兄弟会議の末に一人暮らしの権利を獲得した。ボケた親に振り回されたあの日々は何だったのかと思うほど、なんともあっけない解決だった。 十一月に候補を決め、十二月に物件に足を運び、一月に移住…

明けましておめでとうございますと言わせてください

あけましておめでとうございます。 という時候の挨拶はいつまでつかえるのでしょうか? しばらくぶり、というか2020年に突入してから初めてのブログになるのでこの挨拶で始めさせていただきます。あけましておめでとうございます。 あけましておめでとうござ…

わざわざワシの愚痴を聞いてくれ

愚痴が言いたい。 愚痴を言わせて欲しい。 愚痴を言う。 誰が悪いのかというと「私の性格が」としか言えないのだけれど、それでも言いたい。スーパーでのあのやりとりを。 環境問題の改善策としてレジ袋が有料になって久しい。不要なビニール袋が増えるのが…

海の見えそうなカラオケスナック 2/2

tthatener.hatenablog.com 一度興味を持ってしまったものを断ち切り忘れ去るのはなかなか難しい。どうでもいいことに興味を抱き、パソコンの前で朝を迎えるなんて一度や二度のことではない。 気が付くと、私は車のエンジンをかけていた。向かう先はもちろん…

海の見えそうなカラオケスナック 1/2

自宅から坂を上り信号を一つ越えると、かつてカラオケスナックだった二階建ての建物が左手に見えてくる。 そこは住居も兼ねた店舗で、兄の同級生が住んでいて、私の同級生も住んでいた。コンクリート造りのその建物は一階が車庫で、外階段を上がると店舗の入…

不思議と指がチートス

ごくたまに、ピントがズレることがある。 視力が落ちて物がぼやけるとかいう類たぐいのことではなくて、例えばカメラのズーム機能が狂って物がとても大きく見えたり逆に小さく見えたりするような調子になる。スマートフォンに表示される文字が足の親指くらい…

Everything is a joke

Youtubeを見ていると、マックで働いていたらしいハゲが講義している動画が頻繁に広告に出てくる。 「我、真理得たり」みたいな雰囲気が溢れに溢れていて苦手すぎるので、何度も何度もあの広告が出ないように設定しているのに、隙を見せるとすぐにつるりと画…

全てを知ってしまうと人生はひどくつまらなくなるらしいのです

ああ、夢でよかった、と醒めた後に心からほっとした。とても怖い夢を見た。 走っても走ってもついてくる化け物だとか、高い所から落っこちるような非現実的な夢ではない。退職後にもかかわらず、人手不足という理由で以前働いていた職場の助っ人に駆り出され…

ソフト

私には祖父がいない。これは少し不思議な話だ。 私には両親がいない。これには事情がある。つまり不思議なことではない。 私が三人目の子ども、次男として生まれてから三、四年ほど経ってから、両親は離婚した。何があったのか本当のことはわからないが、と…

玄関先でキングコブラと鉢合わせた時のための心構え

例えば朝、寝ぼけ眼まなこでふらふらと玄関の戸を開けたとして、そこにフードを広げた臨戦態勢のコブラが構えていたらひとたまりもない。しかし、玄関先にコブラがいる可能性を念頭に置いている人なんて、ここ日本にはきっといないだろう。 その危険性にいち…

ドラマーチック

富士山に登山をする際に、ドラムセットを担いで行く、という話は聞いたことがない。 富士登山なんてしたことがないから、果たしてそれが度々あることなのかどうかすらわからない。 では、どうしてそういう話を持ち出すのかというと、彼の準備リストにそれが…

24億5千万回の男

我が家の電子レンジは壊れている。 昨日はくし切りにした玉ねぎに熱を通すのに使ったし、今日は小分けにしたご飯を解凍するのに使った。明日もきっと牛乳を温めたり、料理の時短のために使うのだろう。 だけど、我が家の電子レンジは壊れている。 壊れている…

鬼に金棒、みたいなもんよ

さて、どのような椅子ならば快適に机に向かえるか、と考えたことのある方は多いと思う。 最良の選択をしたかに思えたが、果たして本当にそうだろうか、というお話。 自室で机に向かう機会のある方の半数は悩んだかもしれない。椅子問題。何時間も快適に机に…

共同研究

上下の瞼にガムテープを張り、部屋の電気を一番明るい状態にしている。劣悪な夢を見るために。 シルクのパジャマを身に纏って、シルクのシーツに身を横たえている。上質な睡眠を得るために。 おかしなことをしているわけではない。これは、私の仮説を実証す…

沖縄県西谷市奥田45

我が家の脇を道路が走っている。間に小さな藪を挟んでいるので厳密に言うと脇ではないのだけれど、ごく近くを走っている。 国道でも県道でもない小さな道だけれど、頻繁に車が通る。たまに十台以上はあるハーレーの集団がドドドドと存在感を主張しながら走り…

パソコンが壊れたので脳内でブログを書いています。

我が家のことは、我が一番よく知っている。例えばこの床板を踏めばほんの少したわんでギュウと音が鳴るとか、あの角にはホコリが溜まりやすいだとか。あの壁のへこみは、不要になった棚を移動させた時についたものだ。高校を卒業した頃だ。 私たち一家がこの…